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古い民家のにおい

入った瞬間、「あ、古いおうちのにおいがする」と思いました。そのにおいになんだかほっとさせられました。
外観も年季の入ったクラシカルな佇まいで、愛さずにはいられません。

どこのことかと申しますと、渋谷は道玄坂にある「名曲喫茶ライオン」のことです。
喫茶店好きの人なら言わずと知れた名店ですね。
ご多分に漏れず青猫は喫茶店が大好き。カフェとかいう洒落た空間は落ち着かず、やはり時代に取り残されたかのような喫茶店と呼ぶに相応しいお店が好きなのです。
ライオンにはずっと行きたいと思っていたのですがなかなか機会をつかめずにいました。そうして先日ついに「よし、行くべか!」とインターネットでお店のHPを検索し、地図で場所を確認し向かったのです。

道玄坂と言えばラブホテル街です。大通りを一歩わき道に入ると、そこはもうありとあらゆるラブホが立ち並ぶ猥雑な空間。奥にはホテルが覗く坂道の途中にライオンは建っています。
「名曲喫茶ライオン」の看板が見え、建物が見えた瞬間、あたしは胸が一杯になってしまいました。だって道玄坂という場所にはあまりにも不釣合いなほど落ち着きを払い、成熟した高貴な空気を醸し出していたんですから。

静かに扉を開けて中に入ります。すると目の前には荘厳な木製のスピーカーが鎮座していました。圧倒的な迫力です。バイオリン音楽が流れていて、誰一人お喋りをする者はおりません。
そう、ここは名曲喫茶。音楽に耳を傾けるための場所であり、決してお喋りなどをするための空間ではないのです。
それは一人で来ることが最も望ましい場所。
喫茶店でより有意義な時間を過ごそうと、小説とノートとペンを鞄に入れて向かったのに、ついにそれらの出番は巡ってきませんでした。
吹き抜けになった2階、スピーカーのすぐそば、手すり横の席に腰を下ろし、ホットココアを飲みながら過ごす時間は、それだけであたしを充分過ぎるほど満たしてくれたのです。

これが老舗の持つ味わいなのか、席を離れるのは本当に惜しい気持ちでした。
建物も、そして主役であるスピーカーから流れる音楽も、歳を取っています。レコードではなくCDがあり、クオリティの高い音響システムもある今日、ライオンで聴くクラシックはサウンド的には良質とは呼べません。それでもこのお店の持つ空気感は病みつきになるものがあります。

今後青猫は毎週でも通うつもりですよ。うへへ。
by coffee-cigarette | 2006-10-22 21:56
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